ピックアップレポート vol.01

IGC池谷幸雄体操倶楽部

URL
http://www.iketaniyukio.com/
住所
〒187-0044 東京都小平市喜平町1-5-10
TEL
042-329-8688
FAX
042-329-8689
E-MAIL
igc-info@iketaniyukio.com

IGC池谷幸雄体操倶楽部

体操を通して社会に出るための準備をする

安心して子どもを預けられる環境が何よりも優先される

練習風景1

見学して先ず驚いたのはハードの充実ぶり。総工費2億円をかけて平成13年に建てられたジムは、池谷さんの理想と情熱とアイデアが随所に散りばめられていた。

1階は選手コースの子どもたちが主に練習しており、床から体操器具まで全てがプロ仕様。池谷さんがオリンピックで獲得した銀メダルを超えて、金メダルを狙える選手を育成するために、施設の整備は最低条件だったのだという。

2階は初級・中級者向けのスペースになっており、こちらの床もスプリングが入っているので怪我の予防対策は万全だ。2階の一角には作り付けの長椅子が配置されており、保護者が子どもたちの練習風景を間近でゆっくり見学できるようになっている。我が子の成長を常に見守っていたい保護者にとって嬉しい配慮だ。

ジム内に鍼灸接骨院を入れているのは、選手時代怪我に苦しんだ池谷さんならではの発想。選手コースの子どもたちは定期的にここで体のメンテナンスをしているそうだ。技術が向上し体が大きくなるとメンテナンスをしっかりしないと選手生命にかかわるからだ。施術スタッフは全員体操経験者なので体操特有の痛みなどへの対応は万全。ジムの子ども達のみならず、部外者の体操選手も治療に訪れるという。

適切な指導があればどんな子でもできるようになる

練習風景2

次に目についたのが子どもたちを指導するコーチの人数。子ども10人に1人のコーチという比率を最低条件にしているそうだが、見学した時は子ども7~8人に1人のコーチがついて、丁寧に子どもの補助・指導を行っていた。跳び箱の練習では、1台に必ず1人のコーチが付くようにしており、怪我の防止をはかっていた。池谷さん曰く、跳び箱は本来危ない器具で、指導者が補助することなしに初心者を跳ばせるのは危険なのだそうだ。

コーチ陣は、体操の指導者は身体の使い方の専門家であるという自負を持っている。初心者向けの指導のポイントは動作を分解して、一つひとつ身体の使い方を教えることだそうだ。例えば跳び箱の場合であれば、助走、踏み切り板の使い方、手の付き方、跳ぶ姿勢、目線、着地などの動作を一つひとつ着実に身に付けさせれば、どんな子どもでも跳べるようになるという。

どんな大人になるかは、小学生までの経験で決まる

池谷さんの執務室でお話を伺っている際に、子どもたちが元気な声で挨拶をしているのが壁越しに度々聞えてきた。また、すれ違う子どもたちが気持ちよく大声で挨拶をしてくれる。指導理念に「体操を通じて『健康』『しつけ』『技能』をキーワードにバランスのとれた心身を育む」とあるように、このクラブは体だけでなく心の成長を目指しているのだ。

挨拶は選手コースの子どもたちは特に徹底されている。部外者である私を発見するなり、フロアで自主練習していた25人の子ども全員が、練習を中断し挨拶をしてくれたのには驚いた。来客に対しフロアの社員全員が起立して「いらっしゃいませ!」と叫ぶ会社がある。これには、軍隊のようで少しやり過ぎだなと感じるものだが、挨拶をしてくれるのが子どもだと清々しさを感じるから不思議だ。選手コースはコーチの推薦がなければ入れない難関。彼ら彼女らはこのクラブの代表であり、下級クラスの子どもたちの良きお手本になってもらいたいとの思いから、選手コースの練習場所を1階にし、人目に晒しているのだそうだ。

「傾聴」する姿勢を身に付けさせることにも注力しているそうだ。体操は危険なスポーツではないが、注意を要するスポーツではある。新しい技にチャレンジする際にコーチのアドバイスを注意深く聴く必要がある。その経験を通して人の話をしっかり聴く癖をつけさせているのだ。歩行児~3歳の幼児を受け入れている「ベビージム」というクラスでも挨拶と話を聴くことに関しては徹底させているそうで、幼い頃に習慣化させることを狙っている。

練習風景3

練習風景4

また、「叱られる」経験も意図的に与えているという。叱られる経験をしないと、ただ感情的に怒られているのと、自分を思って叱ってくれていることの区別がつかない子になってしまうらしい。叱られることをイジメだと受け止めてしまう子もいるという。

「私はこのクラブで一番怖い存在なんです」とご本人が仰るように、案内をしてもらっている際に池谷さんの周辺は空気がわずかながら張り詰めるのが分かる。「厳しいコーチもいれば、優しいコーチもいる。色んなタイプの大人と出会って刺激を受けてもらいたいのです」というのが、池谷さんが鬼コーチに徹する理由だそうだ。

神経系は10歳位までにほぼ100%完成してしまうと言われている。だから、子どもの頃に体操を通して全身を使う様々な動きを身に付けることは理にかなっている。他のどんなスポーツにも対応する基礎づくりにもなる。また、挨拶や人の話を聴く姿勢などを子どもの頃に身に付けるのはとても有意義なことだ。池谷さんがこのクラブで子どもたちに授けているのは、社会に出るための準備なのだ。

取材を終えて

10年前のクラブ立ち上げ当初は100人程しか生徒が集まらなかったそうです。なんとも意外な話ですが、オリンピックのメダリストである池谷さんが開いたジムなので、選手の養成だけが目的だと勘違いされたのが原因だったそうです。今では「体操を通して心と体を鍛える」というコンセプトが口コミでじわじわ広がり、生徒数は900人に達しています。関西への進出も果たし、その勢いは止まりません。
跳び箱や鉄棒ができずに体育の授業が嫌いになっていく子どもがいます。これはもちろん子どもの責任ではなく、教え方や教えるシステムに限界があるのだと気づきました。学習塾があるように、運動の塾もあって然るべきでしょう。苦手が克服できれば子どもたちの自信につながり、スポーツへの興味も増すはずです。
子どもたちの真剣な眼差しと元気な挨拶に背筋が伸びました。(2011.6.3)

※池谷幸雄さんのインタビューも併せてご覧ください。

NPO法人SKiP理事長 新井茂


特集&コラム一覧

2012.01.09
教え過ぎず、型にはめず、子どもの考えを引き出す
グランセナFC会長/株式会社トップカルチャー代表取締役社長 清水秀雄さん
2011.11.21
理不尽に耐えることで人は大きく成長する
プロ野球解説者 牛島和彦さん
2011.09.25
人に勝つよりも自分に勝つことが快感だった
アテネオリンピック競泳自由形金メダリスト 柴田 亜衣さん
2011.08.26
飯田覚士ボクシング塾「ボックスファイ」
ピックアップレポート Vol.2
2011.08.26
スポーツを始める適齢期は人それぞれであっていい
ボクシング/元WBA世界スーパーフライ級チャンピオン 飯田覚士さん
2011.07.19
IGC池谷幸雄体操倶楽部
ピックアップレポート Vol.1

もっと読む